昼間どうしようもなく眠いことはないですか?

「睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)」という言葉を聞いたことがありますか?

以前、新幹線の運転士が居眠り運転をして、後にその原因が睡眠時無呼吸症候群であったと判明し、大きなニュースになったこともありました。

この睡眠時無呼吸症候群にも「耳鼻咽喉科」が大きく関わっています。

特別な病気と思いがちですが、日本には睡眠時無呼吸症候群の患者は300万人とも500万人以上いるとも言われています。40代、50代の働きざかりの男性に多く、いびきをかく人の7割が睡眠時無呼吸症候群とも言われます。

医学的には、10秒以上の呼吸が停止する状態を無呼吸といいます。その無呼吸が睡眠中に、1時間当たり5回以上あると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

ただ、寝ている間のできごとですので、自分が睡眠中に息が止まっているという自覚はありませんし、いびきの有無もご家族に聞かないと評価できません。最近では寝ている時のいびきを検知して録音するようなアプリもあるので、気になる方はためしても良いかもしれません。

ご自身では自覚症状がないのだけど、ご家族から大きないびきや、寝ている時息が止まっていることを指摘されて病院を受診される方も多いです。

主な症状としては以下のようなものがあります。

  • 睡眠中に呼吸が止まる。
  • 大きないびきをかく
  • 夜中に頻回に目が覚める
  • 夜頻回にトイレに行く
  • 居眠り運転をしそうになる
  • 起床時に頭痛がする
  • だるさがある
  • 熟睡感がない
  • 集中力が低下する
  • 日中・強い眠気を感じる
  • 不眠症
  • 肥満 

など多彩な症状が出現することが分かっています。

結果として、日中の仕事や学習の効率が落ちてしまい、作業がはかどらないばかりか、業務上のミスや事故を起こすことにもつながりかねません。

また睡眠時無呼吸症候群は、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など重篤な合併症を引き起こす恐れがあり、また、高血圧をはじめ高脂血症、動脈硬化、不整脈などの恐れもあります。

睡眠時無呼吸症候群の簡単なチェックは自分自身でもできます。

睡眠時無呼吸症候群は、本人が症状を自覚しにくいため、まずは、眠気の程度が病的であるか次のようなテストで評価します。気になるかたは是非行ってみてください。

<Epworthの眠気テスト(Epworth Sleepiness Scale)>

0:うとうとする(居眠りをする)ことは絶対にない
1:ときどきうとうとする(居眠りをする)ことがある
2:うとうとする(居眠りをする)ことがよくある
3:だいたいいつもうとうと(居眠りを)してしまう

状  況点  数
1.座って読書しているとき0・1・2・3
2.テレビを見ているとき0・1・2・3
3.他の人もいる公共の場所で動かないで座っているとき
 (会議に出席中、映画館にいるときなど。)
0・1・2・3
4.他の人が運転する車に乗せてもらって、
  1時間くらい休憩なしでずっと乗っているとき
0・1・2・3
5.事情が許せば、午後に休息をとるために横になっているとき0・1・2・3
6.座って人とおしゃべりしているとき0・1・2・3
7.お昼ごはん(アルコールは飲んでいないとして)の後に、
  静かに座っているとき
0・1・2・3
8.車を運転中に、渋滞や信号待ちなどのために数分間止まっているとき0・1・2・3
合 計0~24点

合計11点以上の人は病的な眠気があると考えられ、その原因の1つとして睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。ただし、合計10点以下でも家族から睡眠中の呼吸停止や大きないびきを指摘されたり、日中強い眠気を感じたりしたことがある人は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

このほか、体型では肥満体型だとなりやすくなります。太っていて首まわりに脂肪がついている、舌が大きい、扁桃が大きい、下顎が後退している、鼻炎・鼻中隔弯曲症など鼻閉があるなども原因になりえます。

診断するためには、寝ている時に息が止まっているかどうかを評価する機械(簡易睡眠ポリグラフ検査といいます)を貸し出しますので、ご自宅で装着して寝て頂き、睡眠時無呼吸症候群かどうかを確かめます。ご自宅で検査できるお手軽で簡単な検査です。後日、検査結果の説明を医院で行い、睡眠時無呼吸症候群と診断されれば治療を開始します。

睡眠時無呼吸症候群の治療は、CPAP(シーパップ)と呼ばれる特殊な装置を使って体内に空気を送り込む治療法、マウスピースを使った治療のほか、喉や鼻の治療をして空気を通りやすくする治療や、肥満症の人は減量も改善策として挙げられます。

耳鼻咽喉科に行くと、ご自身の鼻や喉の状態や、体型、症状を見てその人にあった治療方法を提案します。

ご家族から大きないびきを指摘される方、昼間の眠気の強い方など、一度お気軽にご相談してください。

寝ている間に、息がとまる「無呼吸」、または、息が浅くなる「低呼吸」を繰り返すことで様々な合併症を起こす病気です。

空気の通り道である上気道が狭くなることが主な原因です。

首周りの脂肪が多いと上気道が狭くなりやすいなど、肥満体質は睡眠時無呼吸症候群に深く関連しています。

また口蓋扁桃(扁桃腺)が大きい、舌が大きい、鼻の通りが悪い、顎が小さい、顎が後退しているなども原因となり得ます。

症状としては大きないびき、夜間の頻尿、日中の眠気、起床時の頭痛などの症状があり、日中の眠気により仕事や勉強の効率の低下が問題となります。

問診で睡眠時無呼吸が疑われるときは、まずは鼻やのどなど上気道の狭窄の有無を診察で確認します。また携帯型装置による簡易睡眠ポリグラフ検査(簡易PSG)にて睡眠中にどれくらい無呼吸状態があるかを調べます。この検査はご自宅にて簡単に行うことができます。

簡易PSGにて、1時間あたりの無呼吸状態時間と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上であり、かつ上記の症状を伴う際に睡眠時無呼吸症候群と診断します。

AHIが高値で日中の眠気などを認める睡眠時無呼吸症候群では、経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous positive airway pressure:CPAP)が標準的な治療とされています。CPAPはマスクをはめて、機械から持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法です。

また、下顎を前方に移動させる口腔内装置(マウスピース)を使用して治療することもあり、ご希望の方は歯科を紹介いたします。

ご自身で出来る治療としては、肥満の方は、食生活や運動などの生活習慣の改善を心がけダイエットすることが重要です。子どもの睡眠時無呼吸症候群ではアデノイド(鼻の奥の上咽頭あるリンパ組織が病的に腫れてい状態のことです)、口蓋扁桃肥大(扁桃腺が大きいこと)が原因であることが多く、その際は手術も検討いたします。

大人の睡眠時無呼吸症候群では高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が高くなります。

気になる方はまずはお気軽にご相談ください。

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